Keith Jarrett A Biography (English edition)を読む

ピアノの二刀流、キース・ジャレットの伝記(2020年7月英語版)を読んでゆきます。

<連載最終>Keith Jarrett伝記(英語版)エピローグ、筆者紹介

エピローグ 彼は小型のシルバーグレーのBMWを運転して、私を迎えに来てくれた。運転席から声をかけられると、私は車に乗り込む。私達は彼の自宅へと向かう。鬱蒼とした森に囲まれている、なだらかな丘の上にたたずむ家だ。どこまでが敷地内の芝生で、どこか…

<前半部改訂版>Keith Jarrett伝記(英語版)pp164-171

12.抗うこと/立ちはだかるもの ~最後の涙~ キース・ジャレットとは何者か。我々が目撃する最もクリエイティブなミュージシャンの一人、ソフトな口調で話す男(そもそも人前で話をすれば、のことだが)、高度な理解力に支えられた聴く耳を持つ人、大胆…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp164-167

10.文句垂れ キース・ジャレットとは何者か。我々が目撃する最もクリエイティブなミュージシャンの一人、ソフトな口調で話す男(そもそも人前で話をすれば、のことだが)、高度な理解力に支えられた聴く耳を持つ人、大胆なピアノ奏者、時代の最先端を生き…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp159-163(最後)

彼の作品に対しては、様々意見は分かれていたものの、4年間という短い間に、キース・ジャレットはジャズ以外の分野でも、創作力のあるところで名前を上げていた。誰も疑う余地のないことだが、ジャズの分野での評判が、ジャレットのクラシック分野での活動に…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.154-159

11.音楽のすべてを兼ね備えたアーティスト いつの時代も「作曲」(予め楽譜を用意すること)と、「インプロヴァイゼーション」(前後の流れを鑑みその場で作り発する)とは、ジャズの世界では微妙なバランス関係にある。それが特に顕著になったのが、1960…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.149-153(最後)

こんなにも極端に正反対の判断が下るのには、ジャレットが予見していたとんでもない誤解の数々が、その根底にあるのではないか、と思われる。「バッハの録音は、ドンピシャのタイミングでやれた気がするよ。」ニュージャージー州オックスフォードの彼の自宅…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.145-149

10.クラシック音楽を弾きこなすジャズマン キース・ジャレットがリリースした、J.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集第1巻」は、大きな話題を呼んだ。選曲が理由ではない。所謂「芸術音楽」とされるヨーロッパ伝統のクラシック音楽について、バロックか…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.139-144(最後)

1985年から1986年にかけてヨーロッパで行われた2つのコンサートの録音「スタンダーズ・ライブ(通称「星影のステラ」)と「スティル・ライブ(通称「枯葉」)も特筆に値する。特に注目すべきは、「スティル・ライブ」。こちらは伝説とも言うべきビル・エヴァ…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.136-139

こういったメロディの数々が、創意工夫に富んでいることは、キース・ジャレットがスタンダードナンバーに頼る傾向にある上で重要な要素なのだ。もっと言えば、彼が自分のインプロヴァイゼーションをする上で使いもになる素材を引っ張ってくるという論理は、…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.131-136

9.アメリカズソングブック 1983年1月の、ある霜の降りるような寒い月曜日のことだった。キース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネット、そしてマンフレート・アイヒャーの4人が夕食のテーブルを囲んでいたのは、ニューヨークのとあ…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.127-130

「ケルン・コンサート」が1975年にリリースされた際の論評の熱狂ぶりは、これに先行した2作品「フィエシング・ユー」「ソロ・コンサート」以上のものだった。中でも最大級の賛辞を贈ったのが、「ローリング・ストーン」誌に寄稿したロバート・パーマーである…

「喰らふべきアーティスト」キース・ジャレット

キース・ジャレットは、「珍味/珍獣」でなく、日々の糧として「喰らうべきアーティスト」。なぜなら、彼は、「基礎」と「独自性」が確かで、かつ多彩さで人を魅了する…彼の伝記を半年読んで、そう考えます。因みに私は不勉強で、彼の伝記を読み始めるまでは…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.123-127

8.あるカリスマ的レコードの歴史 ご存知の通り、「偉業」の多くは偶然の産物ではなく、手塩にかけて創られるものだ。時にはそれが、意図せず、そして不本意ながら創られることもある。そういった「偉業の創り主」が一人もいなかったのが、1977年の国際現代…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.118-122

この百科事典に載っているもののお陰で、次々と生み出されるレコーディングは、いずれも高い品質なのだ。更には、キャパが大きいことも重要だ。だがこれは、ジャレットが自身の「しきたり/儀礼」を厳格に守った故の結果なのである。殆ど全てのアーティスト…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp.114-118

1996年春、ジャレットは彼のトリオと共に、10回のコンサートを日本で開催し、その後モントリオールでのジャズ・フェスティバルと、ヨーロッパでの夏のフェスティバルにいくつか参加した。その中でも特に、フランスのアンティーブは、彼らトリオがこれ以前定…

Keith Jarrett伝記(英語版)pp110-114

ジャレットがこの楽器を選んだのは、その特別な音色がお目当てだった。彼はモルデントやターンといった古楽の奏法に精通し、ジョン・ダウランドのような作曲家の和声の使い方をしっかり理解し、あるいはポリフォニーの曲作りの中での装飾音符の奏法に対して…

<再掲・邦訳付>:バレンボイム、イスラエルとパレスチナを音楽の力で

現在来日中の、ダニエル・バレンボイムが、2004年5月9日ウルフ賞受賞に際しておこなったコメントからの一節です。公式日本語訳がなさそうですので、拙訳をつけます。これを「夢物語」と片付けず、両「国」のトップには頑張っていただきたいと思います。 De…

Keith Jarrett伝記(英語版)7章pp.106-110

7.栄華と危機 キース・ジャレットにとって1980年代は、初っ端から、演奏活動の面で忙しかった。1970年代にリリースした数々のソロアルバムが、ことごとく大成功を収め、彼はピアノ奏者として、ずば抜けた存在となっていた。同時に、彼の心に火がついて取り…

<再掲>「偉大な霊よ」(インディアン酋長の詩):キース・ジャレットの台所メモ

キース・ジャレットの自宅の台所には、インディアン「スー族」の酋長・イエローラーク(黄色いヒバリ)の有名な「偉大な霊(たましい)よ」の英語訳が貼ってあります。自然豊かな環境から、彼は「Spirits」など、様々な逸品を仕上げるインスピレーションをう…

Keith Jarrett 伝記(英語版)6章pp102-end(105)

4年後、グルジェフの作品を収録した「祈り:グルジェフの世界」は、新たな方向へと舵を切る作品となった。その要素は2つある。一つには、この作品では、ジャレットはインプロヴァイゼーションを、ほぼ完全に封印し、自分以外の人間が作った曲を演奏したこと…

フォート・ヤウー:「アナグラム」は思いを込める手段

一つの単語の文字を並べ替えて、全く違う意味の単語を作る遊び、「アナグラム」は、どこの国にもあります(特に、文字が「音」を表す国では)。 (猫)cat → c / a / t → act(演じる) キース・ジャレットの作品では Fort Yawuh → f / o / r / t / y / a / …

Keith Jarrett伝記(英語版)6章pp.97-102

同じ年、そしてこのアルバムが、いわばジャレットとアイヒャーの二人の「手元に転がり込んできた」その後で、キース・ジャレットは180度方向転換をして周囲をアッと言わせた。マンフレート・アイヒャーに刺激を受けた彼は、ドイツのウンターアルゴイ郡へ向か…

Keith Jarrett伝記(英語版)6章pp93-97

「ソロ・コンサート:ブレーメン、ローザンヌ」は、キース・ジャレットが昔ながらのジャズ伝統と袂を分かち、二度とこれまでのインプロヴァイゼーションには戻らない:前もって口頭で打ち合わせをしない、既成のコード進行を使わない、そういった意味では紙…

Keith Jarrett伝記(英語版)6章pp.88-92

ジャレットは天賦の才を持つソリストと書いたが、彼が一般的なピアノ奏者の味わう苦労をせずに来ているかと言えは、そんなことはない。グレーテ・ヴェーマイヤーというピアノ教育者が、カール・ツェルニー(フランツ・リストにピアノを教えた人物)について…

「ウイーン・コンサート」ライナーノーツ 考察

I have courted the fire for a very long time, and many sparks have flown in the past, but the music on this recording speaks, finally, the language of the flame itself." キース・ジャレットのファンの方にはお馴染みの、「ウイーン・コンサート…

Keith Jarrett伝記(英語版)6章pp.85-88

6.無限の可能性を秘めたソリスト ピアノにまつわる金言格言をいくつか見てみよう。エドゥアルト・ハンスリックという、ブラームスの友人にしてワーグナーの仇敵の言葉:ピアノ奏者の腕の見せ所は、「タッチ」(鍵盤の触れ方)の奥義にある。詩人ハインリッ…

Keith Jarrett伝記(英語版)5章pp.77-84

チャーリー・ヘイデンといえば、ジミー・ブラントンやレイ・ブラウンといった奏者たちと同じ、「ウォーキングベース」のスタイルを持つ印象的な存在として知られているが、同時に、自らリフを創り出し、それをしっかりと演奏し続けることができる。これには…

Keith Jarrett伝記(英語版)5章pp.73-76

「ミスフィッツ」で生まれた圧の強さを、穏やかな静けさへと変化させてくれるのが、次の曲「フォート・ヤウー」だ。ジャレットの金糸で装飾を施すようなピアノのモチーフが、フェルマータのたびに分断される。それらの音は、次の新たな動きが起こるまで、響…

Keith Jarrett伝記(英語版)5章pp68-73

5.「極み」へ向かう、「いろは坂」の数々 「アメリカ音楽」とは何か?名作曲家にして毒舌批評家の、ヴァージル・トムソンが、なかなかニクい答えを出している「アメリカ音楽を作曲するのは、とても簡単。まずアメリカ人になること。そして頭に浮かんだこと…

Keith Jarrett伝記(英語版)4章pp61-67

このトリオの最初のレコードは、1967年にジョージ・アヴァキアンのサポートの元制作され、1年後「人生の2つの扉」のアルバム名でリリースされた。このレコードを世に送り出したのはネスヒ・アーティガン。ボルテックス・レコードという、アトランティック・…