Keith Jarrett A Biography (English edition)を読む

ピアノの二刀流、キース・ジャレットの伝記(2020年7月英語版)を読んでゆきます。

「ウイーン・コンサート」ライナーノーツ 考察

I have courted the fire for a very long time, and many sparks have flown in the past, but the music on this recording speaks, finally, the language of the flame itself."

 

キース・ジャレットのファンの方にはお馴染みの、「ウイーン・コンサート」のライナーノーツです。彼の伝記を執筆した、ドイツ人のヴォルフガンク・サンドナーは、この一文を「謎めいている」としています。同書の翻訳に挑戦中の私ですが、次のような解釈を試みてみます。

 

動詞courtには、次のような意味があります。

①~を得ようと努力する

②(厄災などを)自ら招いてしまうようなことをしでかす

 

名詞fireですが、キース・ジャレットのここまでの経緯から、次のような含意が考えられます。

①熱意、活力

②非難や抗議の集中砲火

③苦難、厳しい試練

 

同じく名詞sparkですが、以下の候補が挙げられます。

①ひらめき、輝き

②呼び水、火種(比喩的に)

 

そして英語でlanguageといえば、ミュージシャンはこの言葉を「演奏の仕方、楽譜の書き方、音楽表現の仕方」として頻繁に使用します。

 

最後にflameですが、

①炎

②情熱、燃えるような思い

③ののしり

 

以上を踏まえて、次のような試訳を作ってみました。

 

I have courted the fire for a very long time, and many sparks have flown in the past, but the music on this recording speaks, finally, the language of the flame itself."

「僕は長い間心の中に、我が身を焦がす熱い火炎を抱えている。 その炎からは、これまで多くの火花が、散っては輝いていた。でも今回の収録では、本来物言わぬはずの僕の音楽が、僕の心の中の熱い炎のことを、朗々と奏でてしまっている。」

 

この文には、自ら招いた非難、体調などの厄災、そしてそれでも自らの芸術の完璧ならん事を追求する熱い思い、それに苦しみ、時に自分や他人との葛藤から火花を散らしつつも、同時にそれを励みに頑張る、そういったものを「Fire」「Flame」とし、普段は、音楽と言葉を切り離す彼なのに、自分の演奏にそれがでてしまっている、と考えます。