2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧
7.栄華と危機 キース・ジャレットにとって1980年代は、初っ端から、演奏活動の面で忙しかった。1970年代にリリースした数々のソロアルバムが、ことごとく大成功を収め、彼はピアノ奏者として、ずば抜けた存在となっていた。同時に、彼の心に火がついて取り…
キース・ジャレットの自宅の台所には、インディアン「スー族」の酋長・イエローラーク(黄色いヒバリ)の有名な「偉大な霊(たましい)よ」の英語訳が貼ってあります。自然豊かな環境から、彼は「Spirits」など、様々な逸品を仕上げるインスピレーションをう…
4年後、グルジェフの作品を収録した「祈り:グルジェフの世界」は、新たな方向へと舵を切る作品となった。その要素は2つある。一つには、この作品では、ジャレットはインプロヴァイゼーションを、ほぼ完全に封印し、自分以外の人間が作った曲を演奏したこと…
一つの単語の文字を並べ替えて、全く違う意味の単語を作る遊び、「アナグラム」は、どこの国にもあります(特に、文字が「音」を表す国では)。 (猫)cat → c / a / t → act(演じる) キース・ジャレットの作品では Fort Yawuh → f / o / r / t / y / a / …
同じ年、そしてこのアルバムが、いわばジャレットとアイヒャーの二人の「手元に転がり込んできた」その後で、キース・ジャレットは180度方向転換をして周囲をアッと言わせた。マンフレート・アイヒャーに刺激を受けた彼は、ドイツのウンターアルゴイ郡へ向か…
「ソロ・コンサート:ブレーメン、ローザンヌ」は、キース・ジャレットが昔ながらのジャズ伝統と袂を分かち、二度とこれまでのインプロヴァイゼーションには戻らない:前もって口頭で打ち合わせをしない、既成のコード進行を使わない、そういった意味では紙…
ジャレットは天賦の才を持つソリストと書いたが、彼が一般的なピアノ奏者の味わう苦労をせずに来ているかと言えは、そんなことはない。グレーテ・ヴェーマイヤーというピアノ教育者が、カール・ツェルニー(フランツ・リストにピアノを教えた人物)について…
I have courted the fire for a very long time, and many sparks have flown in the past, but the music on this recording speaks, finally, the language of the flame itself." キース・ジャレットのファンの方にはお馴染みの、「ウイーン・コンサート…
6.無限の可能性を秘めたソリスト ピアノにまつわる金言格言をいくつか見てみよう。エドゥアルト・ハンスリックという、ブラームスの友人にしてワーグナーの仇敵の言葉:ピアノ奏者の腕の見せ所は、「タッチ」(鍵盤の触れ方)の奥義にある。詩人ハインリッ…